波板プランター/ito-Flat
作れるもので、なんとかしてみる。
波板素材しか使えないという限定された条件を逆手に取り、この素材でしか実現出来ない商品を作り上げました。client : 大和鋼業株式会社
「波板がね、売れないんですよ・・・」
「波板がね、売れないんですよ・・・」波板メーカーの役員の方とお話する機会がありました。戦前から全く変わって無いんですって、トタンの波板の形は。戦後の復興のなかで、大活躍してきた波板。薄くて軽くて丈夫です。小屋を建てたりちょっとした塀を立てるのでも、もし波板がなかったら、一体今までどうしてきたのでしょうか?
まずは現場へGo!
時代は変わり、プラスチックク製や、角波(四角い波形状)が登場し、トタンの波板は存在感が薄れてきています。まずは、まさに高度成長を支えたであろう巨大な波板工場を見学させてもらいました。大きな波付けプレス機とメッキ槽が堂々と設置されています。頭上では、不気味なきしみ音をさせながら、クレーンがゆっくりと重い資材を移動させています。メッキ槽から立ち上がる湯気で視界はさえぎられ、工場の奥まで見通せません。「きっとこの奥でマジンガーZを作っているのに違いない」と子供の私なら思ったことでしょう。
波板の特性を最大限活かす
しかしどう転んでも、この工場で作れるのは波板だけなのです。うーん、どうしよう。波板は薄くて軽く、波形状のおかげで、縦方向には曲がりにくく、横方向には自在に変形させられます。この特性を活かそう。2枚の波板を重ねて両端をプレスしなおして接着します。間に通気性の良い袋をはさんでありますから、土を入れられます。はい、プランターです。使用しないときはぺちゃんこですから収納に便利ですね。植物が大きくなれば、2枚の波板の隙間を広げて、土を増やせます。ぺちゃんこになるという事は、流通コストも格段に下げることにもつながります。
この商品をある建築家に見せたところ、波板のこんな利用の仕方があったのか、と驚嘆していました。普段見慣れている素材でも、使用シーンを変えてみると、思わぬ効果が出ることに気付かされたプロジェクトでした。